ATF加速器の詳細(2) 高精度ビーム計測技術開発(1) |
ダンピングリング内を周回するビームの位置を測定するには、 真空チェンバーに取り付けられた4つのボタン型電極で行います。 このボタン型電極によるビーム位置モニターは全部で96台備えられており、 通過する電子ビームが発するパルス状電場の強度をそれぞれの電極で計測しビームの重心位置を計算します。 パルス状電場の強度測定は積分型ADC回路にて高速に行なっており、 指定したターン1周のビーム通過軌道を測定します。 測定の最高分解能は3オmです。 ダンピングリング内を周回するビームの軌道は各マグネットの磁極中心を通過するように 調整された時に設計エミッタンスに到達できますが、 そのための磁極中心をビーム応答を見ながら測定するビームベースアライメントの時に このボタン型ビーム位置モニターの性能が発揮されます。 また、ビームのエネルギーを変えた時に軌道の応答を見るディスパージョン関数測定時にも ボタン型ビーム位置モニターの高分解能性能が必要であり、 垂直方向ディスパージョン関数を最小にした時に垂直方向エミッタンスを最小にできます。 このようにボタン型ビーム位置モニターの高分解能性能はリングの到達性能を決めてしまうほど重要なものです。
1-1のビーム位置モニターでは指定したターンの軌道を高精度に測定しますが、 それら96台中の3台にはターン毎にビーム位置を検出し、 連続する総計64000ターンの位置をすべて測定する特殊な回路が備えられています。 それがターンバイターンビーム位置モニターと呼ばれます。 この回路はリング内を周回する1個のバンチ(シングルバンチ)用に作られています。 測定の最高分解能は20オm程度ですが、連続したターンのビーム位置をフーリエ変換する事でビーム位置振動を高精度に 検出する事ができます。このモニターを使用してベータトロン振動数の高精度測定およびその微細変化の測定ができ、 高安定な超低エミッタンスビーム生成のためのビーム調整に重要なものとなっています。 通常このモニターはビームをインパルス的に横方向に蹴るイクサイターと共に使用され、 ビームの揺れの振動数(ベータトロン振動数)を測定します。
シングルバンチ用ターンバイターンビーム位置モニターの回路をさらに高速度で働くように 発展させたものがマルチバンチ・ターンバイターンビーム位置モニター回路です。 測定の最高分解能は同様に20オm程度ですが、2.8ns間隔で周回している20個のバンチそれぞれについて 連続する総計6400ターンの位置を測定する事ができます。 その位置データを同様にフーリエ変換する事でそれぞれのバンチのビーム位置振動を高精度に検出する事ができます。 このモニターは、マルチバンチ運転時のベータトロン振動やシンクロトロン振動のバンチ毎の微細変化の測定ができ、 マルチバンチ運転時の後続ビーム不安定研究のために重要なものとなっています。