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ATF加速器の詳細(2)

高精度ビーム計測技術開発(2)




  1. ダンピングリング内のビームサイズを高分解能で 計測するビームサイズモニター

2-1:レーザーワイヤーモニター

ダンピングリング内を周回しているビームに破壊的な影響を与えずにそのサイズを高分解能で 計測するモニターがレーザーワイヤーモニターです。 これはビームサイズを計測するためにビームにワイヤーをかざすのですが、 ワイヤーがレーザー光という光でできているためビームとの相互作用が小さくビームを壊さずに済むのです。 レーザー光でワイヤーを作り出すには向かい合わせた凹面ミラーによる光共振器を使用します。 このレーザー光ワイヤーをビームにかざし、順次動かしていって、 後方に散乱されるγ線の強度をレーザー光ワイヤーの位置を横軸にとってプロットするとビーム強度の分布が 測定できます。その分布の幅がビームサイズとなります。 レーザー光ワイヤーは小出力の可視光半導体レーザー(CW)を光源として高Q値の光共振器に 入射して作られますが、共振を維持するために片方のミラーにはピエゾアクチュエーターが備えられていて 常に共振を維持するようなnm領域のフィードバックがかけられています。 光共振器の中心付近では約7μmのレーザー光ワイヤーサイズとなっていて、 5μm程度までのビームサイズの計測ができますが、ビームとの相互作用が小さいので散乱γ線量を 蓄積しなければならず測定に数分の時間が必要です。

2-2:SR光干渉型モニター

ダンピングリング内を周回しているビームはその軌道を曲げられる場所、 すなわちアーク部分でシンクロトロン放射光(SR光)を生成します。 SR光はビーム内の電子からの放射ですのでビームの形状の情報をもっています。 通常のリング型加速器では可視光望遠鏡光学系により発光点を撮像することで 発光点の大きさすなわちビームの大きさを計測することが行われていますが、 このダンピングリングの場合放射角から決まる回折限界によって分解能が約50μm程度に制限されてしまいます。 ビームはそれよりはるかに小さい7μm程度の大きさですので可視光望遠鏡光学系ではビームサイズの計測ができません。 そこでダブルスリットを使用した干渉モニターが考案されました。 これはビームからの放射光のダブルスリットによる干渉パターンは、 その可視度がビーム広がりに関係づけられる事を利用したものです。 モニターは放射光引き出しライン上に設置され、偏光子、バンドパスフィルター、ダブルスリット、 干渉縞結像光学系およびCCDカメラから構成されています。ビームサイズの識別分解能は5μm程度です。 計測に要する時間はCCDカメラの撮像時間で決まり、約20msまで高速化する事が可能です。

2-3:X線SR光ビームサイズモニター

ダンピングリングのSR光放射角から決まる回折限界によって可視光望遠鏡光学系では 分解能が約50μm程度に制限されてしまいますが、観測に使用する波長をもっと短くすれば7μm程度の ビームの大きさでも望遠鏡光学系でビームサイズの計測が可能です。 そこで必要となるのは短い波長域でレンズ作用をもつ光学素子や撮像カメラです。 近年のX線領域での撮像カメラの進展や、そしてnm領域での加工技術がもたらしたX線領域で レンズ作用をもつゾーンプレートが利用できるようになりましたので、 X線領域の望遠鏡光学系が実現できるようになりました。 ATFでのX線領域SR光ビームサイズモニターは放射光引き出しライン上に設置され、 反射結晶素子による波長選択、縮小結像するコンデンサー・ゾーンプレート、バックグランド透過光を 取り除くピンホールマスク、拡大結像するマイクロ・ソーンプレート、そしてX線CCDカメラから成り立っています。 選択しているX線エネルギーは3keVです。この時ビームサイズの識別分解能は2μm程度です。 このモニターの何よりも優れている点は、ビームのイメージ像を高速に得られるところです。

2-4:SR光バンチ長モニター

ダンピングリング内を周回しているビームからのシンクロトロン放射光(SR光)はビーム内の電子からの放射ですのでビームの形状の情報をもっています。このSR光発光の持続時間を計測することでビームの長さすなわちバンチ長を測定できます。その測定にはストリークカメラという光時間分解能をもつ発光持続時間測定器にSR光を入射させます。ストリークカメラの最高時間分解能は2psです。