ATF加速器の詳細(2) 高精度ビーム計測技術開発(3) |
取り出されたビームの位置を測定するには、真空チェンバーに取り付けられた4つのストリップライン型電極で行います。 このストリップライン型電極によるビーム位置モニターは全部で14台備えられていて、 通過する電子ビームが発するパルス状電場の強度をそれぞれの電極で計測しビームの重心位置を計算します。 パルス状電場の強度測定は積分型ADC回路にて高速に行なっていて、 一回のビーム通過だけで取り出しラインのビーム軌道を測定します。測定の最高分解能は3μmです。 リングで使用されているボタン型電極よりストリップライン型電極の方が低周波数領域での信号強度が大きく得られますので 最高分解能を上げる事が容易に行えます。
通過するビームのパルス状電場を電極にて検出するのとは異なって、マイクロ波空洞の共振モードを利用する位置モニターがマイクロ波空洞型ビーム位置モニターです。使用する共振モードは通過するビーム位置によって空洞内部に蓄積されるマイクロ波パワーが異なるようなモードです。共振を利用しますのでノイズ雑音に比べて信号強度を大きくでき結果的に検出位置分解能を格段に上げる事ができます。反面、マイクロ波の信号処理を行わなければなりませんので回路が複雑高価になってしまいます。マイクロ波空洞はシリンダー型(茶筒型)を使用しTM110モードを位置検出に使用しますが、この時ビームがシリンダーの中心を通る時には信号が発生せず、中心からずれた場所を通る時は通過半径距離に比例した振幅で信号を発生します。設計分解能は10nm以下が予想されていますが、ATFで現在までに実証されている位置分解能は90nm程度で、検出回路から決まる分解能の他にモニター自身の振動の影響やビーム自身の不安定性の影響を受けている事が予想されています。