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<推薦の観点:国際的に対応を強く要請される研究の概要> |
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光共振器によるレーザー蓄積技術とOff-Axis Parabolic(OAP)反射ミラーの技術を融合することにより、光共振器中点でサブミクロン、1mJ/pulse・10psecパルスレーザービームを高繰り返し(357MHz)で安定に実現できる小型スーパー光共振器を製作して、その性能を実証する。レーザー蓄積と絞込みの究極技術が融合された装置は、ガンマ・ガンマ衝突型実験装置を実現するときに理想的なものになる。本技術と電子ビームを使うことにより、高エネルギー光子ビームが安定に生成できる。これにより色々な研究分野で光子ビームの利用展開が進むことになる。 研究分野/科研費の分科・細目/キーワード:数物系科学/物理学・素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理/国際協力、素粒子実験、高性能レーザー、光源技術、ナノ制御 |
1. 研究開始当初の背景 |
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大強度パルスレーザーパルスと電子・陽電子ビームとの逆コンプトン散乱により発生する高エネルギーガンマ線強度を絞り込まれたレーザーの位置と時間の関数として測定することにより、高エネルギー電子ビームの形状等を測定できる。現状、100μm程度のビームサイズ測定がなされている。国際リニアコライダー(ILC)ビームのビームサイズは5μm以下なので、レーザーを安定に絞り込む技術開発が必須の課題である。スーパー光共振器のレーザーワイヤへの応用を我々が世界で始めて示した。現在、5μm以下から0.5μm程度までのビームサイズ測定をレーザーワイヤで行う国際協力研究開発が行われている。 |
2. 研究の目的 |
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小型スーパー光共振器(レーザー蓄積装置)を使った高分解能レーザーワイヤビーム診断技術に関する研究開発と国際リニアコライダービーム診断装置の開発。高繰り返し(357MHz)、短パルス(10psec, FWHM)、大強度レーザー(1mJ/pulase~100mJ/pulse)のパルスレーザービームをスーパー光共振器で実現する。この光共振器内でレーザーを5μm以下まで絞込み、電子ビームをスキャンすることにより電子ビームの空間・時間プロファイルを診断できることを実証する。 |
3. 研究の方法 |
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購入可能な高反射率平面ミラー2枚(反射率>99.999%)と高反射率球面ミラー2枚(反射率>99.999%)を使って小型スパー光共振器を開発する。レーザーパルス蓄積に必要な共鳴状態を維持する制御技術の研究開発が必要であり、圧電素子等を使ってミラーの位置制御をサブナノメータで行う。市販のモードロックレーザー発信器によりレーザーパルスを光共振器に蓄積する技術を確立する。数μm以下の高エネルギー電子ビームと光共振器内で絞り込んだレーザービームを衝突させて、逆コンプトン散乱により生成された高エネルギーガンマ線強度をレーザーの位置と時間の関数として測定する。この衝突実験によりレーザーワイヤの性能を実証することになる。 |
4. これまでの成果 |
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本研究課題で重要な成果は、レーザーパルス幅7psec(FWHM), 357MHz, 7Wのモードロック発信器出力レーザーを42cm Super Cavityに蓄積して、1000倍(蓄積レーザーエネルギー/入射レーザーエネルギー)の増幅率を得たことである。さらに電子ビームとの衝突精度をピコ秒以下にするために、電子加速高周波とレーザー発信器を完全同期させた。この状況で蓄積されたレーザーパワーは1.4kWであった。現在、電子ビームとこのレーザーパルスの逆コンプトン散乱によるX線測定実験準備を行っている。 また、99%Off-Axis Parabolic(OAP)反射ミラーを購入して、レーザー光学系の確認試験を行った。OAPの反射率を99.99%以上にするには放物面のナノメータ加工と誘電多層膜蒸着が必要であるが、財政的に本ミラー製作は困難である。そこで、2枚の高反射率平面ミラーと2枚の高反射率球面ミラーで構成できるスーパー光共振器を設計した。以下の図がその概念設計である。レーザーパス長が1.68mまたは3.36mのリングスーパー光共振器に関する詳細設計を行っている。この光共振器では既に購入可能な高反射率ミラーのみを使うので、ミラー支持方法の詳細設計製作のみが新たな課題である。 |
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Four mirrors 3D optical cavity |
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光共振器の開発とは別に、10Hz 繰り返し 大強度パルスレーザーを使ったレーザーワイヤ開発を英国グループと国際協力で進めている。このレーザーワイヤ開発実験で電子ビームとの衝突制御、レーザースキャン、レーザー絞込み及びガンマ線測定の技術開発を行い、2μm の電子ビームと6μm のレーザ ー衝突を安定に実現している。次の写真は衝突実験に使っている英国Oxford 大学製作のレーザー・電子ビーム衝突用真空チェンバーである。5月にレーザーサイズをさらに絞込み2μm の電子ビームの形状を測定する予定である。
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Photograph of the vacuum chamber after installation and before the associated optics was installed. | 5. 今後の計画 |
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43MeV小型電子加速器とATF Damping Ring (KEKの先端電子加速器装置)に光共振器を設置して、レーザーと電子ビームの衝突実験を行う。一方、光共振器の改良により、レーザー増幅率を1万倍から10万倍以上に上げる。平成21年度までに目的としているスーパー光共振器の実証実験を逆コンプトン散乱実験により行う。このとき電子ビームはエネルギーが1.3GeV、垂直方向ビームサイズ5μmである。 |
6. これまでの発表論文等(受賞等も含む) |
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1. K.Sakaue, M.Washio, S.Araki, M.Fukuda, Y.Higashi, Y.Honda, M.Takano, T.Taniguchi, J.Urakawa, N.Sasao, H.Sakai, "Development of Pulse Laser Super-Cavity for Compact High Flux X-ray Sources", Proceedings of EPAC 2006, THPCH154, Edinburgh, Scotland, 2006 2. S.T.Boogert, G.Blair, G.Boorman, A.Bosco, L.Deacon, C.Driouichi , P.Karataev, T.Kamps, N.Delerue, S.Dixit, B. Foster, F.Gannaway, D.F Howell, M.Qureshi, A.Reichold, R.Senanayake, A.Aryshev, H.Hayano, K.Kubo, N.Terunuma, J. Urakawa, L.J.Jenner, A.Brachmann, J.Frisch, M.Ross, "A Laser-wire System at the ATF Extraction Line", Proceedings of EPAC 2006, MOPLS080, Edinburgh, Scotland, 2006 3. T.Omori, M.Fukuda, T.Hirose, Y.Kurihara, R.Kuroda, M.Nomura, A.Ohashi, T.Okugi, K.Sakaue, T.Saito, J.Urakawa, M.Washio, and I.Yamazaki, “Efficient Propagation of Polarization from Laser Photons to Positron through Compton Scattering and Electron-Positron Pair Creation”, Physical Review Letters, 96, 114801-1,-4, 2006 |
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